理学療法士として働いていると、患者様から「整体と何が違うの?」と聞かれることはありませんか?
一見似ているように思える理学療法士と整体師ですが、その役割や施術内容、資格制度には明確な違いがあります。
整体師に関する知識がないと、説明に困る場面もあるかもしれません。
本記事では、理学療法士の専門性を再確認しながら、整体師との違いを7つのポイントに分けてわかりやすく解説します。
違いを理解することで、患者様に的確な説明ができるようになり、理学療法士としての信頼性をさらに高める手助けになるでしょう。
【理学療法士と整体師の違い】

理学療法士と整体師は、それぞれの役割や資格、提供するサービスが明確に異なります。
患者様から違いについて聞かれた際には、患者様が知りたい内容に応じて、7つのポイントを活用して説明すると効果的です。
私は理学療法士として本業に従事しながら、整体業を副業として行っているため、両者の違いを現場での実体験をもとに、よりリアルに伝えることができます。
それぞれの専門性を活かして患者様に適切なサポートを提供するためにも、この違いを理解することは非常に重要です。
【①開業権の有無】
理学療法士には開業権がありません。
そのため、理学療法士として独立開業している人はいません。
これは法律で規制されており、違反すると法に触れてしまうためです。
一方で、整体師には開業権があり、資格の有無にかかわらず整体院を開業することができます。
そのため、最近では理学療法士などの国家資格を持ちながら、整体師として活動する人も増えてきています。
私自身もその一人です。
理学療法士として働いている際に、患者様から「独立すればいいのに!そしたらあなたのところに行くよ!」といったお言葉をいただくことがあります。
そのようなときは、「理学療法士は開業できない」という点を簡単に説明しつつ、「別の形で開業できたら、ぜひお願いします」と、やんわりと受け流しましょう。
こうした言葉をかけていただける患者様を増やしていくことが、将来整体師として開業する際の大きな支えになります。
ただし、整体師の中には資格や十分な知識がないまま開業している人もいます。
そのため、病院を退院する患者様に対し、安易に整体院を勧めるのは避けてください。
患者様の健康を第一に考え、信頼できる専門家を選んでいただけるよう配慮しましょう。
【②利用できる保険の種類】
理学療法士によるリハビリテーションは、医療保険や介護保険の対象となるため、患者様は収入や年齢に応じて1割から3割の自己負担で治療を受けることが可能です。
一方、整体師による施術は医療類似行為に分類されるため、医療保険や介護保険の対象外となり、全額自己負担となります。
この違いが、患者様がどのサービスを利用するかを考える上で重要なポイントになります。
例えば、病院を退院した後も残存する障害の継続的な治療を希望する場合は、保険適用のある治療院をお勧めすることが適切です。
一方で、治療というよりも健康の維持や予防を目的としている場合は、整体院を検討するのも良い選択肢となります。
金銭面だけを考慮すれば、保険適用で受けられるリハビリテーションの方が経済的ですが、患者様には金銭面以外にも、生活状況や経済力、社会的地位、嗜好、さらには理想的な施術内容など、優先したい要素がそれぞれ異なります。
退院後の体のケアについて相談を受けた際には、患者様の希望や状況にしっかり寄り添い、それに合った施設や方法をお勧めすることが大切です。
その配慮が患者様の満足度や信頼感にもつながります。
【③通院期間の制限】
理学療法士が提供するリハビリテーションには、国や病院の基準に基づく治療期間の上限があります。
そのため、一定の期間が過ぎるとリハビリが打ち切られることがあります。
一方で、整体師による施術には通院期間の制限がなく、利用者様自身の基準で、満足するまで継続して施術を受けることが可能です。
特に健康の維持や予防を目的とする場合、整体のような自費領域の施術は柔軟性が高い選択肢となります。
日本には「リハビリ難民」と呼ばれる人々が約200万人いると言われています。
これは、病院での治療を終えたものの、まだ満足のいく回復状態に至らず、継続的なケアを必要としている人々のことを指します。
このような方々にとって、自費で受けられる整体やリハビリ関連サービスは重要な受け皿として期待されています。
もし退院を控えた患者様が「この先が不安だ」と感じているようであれば、選択肢の一つとして自費領域の施術を検討することを促してみるのも良いでしょう。
患者様の不安に寄り添い、継続的なケアの選択肢を提案することで、安心感を与えるとともに、患者様自身の健康や生活の質を高めるサポートにつながります。
【④担当指名の可否】
理学療法士でも整体師でも、人による技術の差や性格の相性は大きく異なります。
そのため、「どこでやってもらうか」よりも「だれにやってもらうか」が重要だと言えます。
保険診療におけるリハビリテーションは、全国民が平等に最低限の治療を受けられるよう設計されたシステムです。
このため、理学療法士を患者様が指名することはできず、担当者がだれになるかは運次第となります。
しかし、理学療法士によるリハビリテーションの質には個人差があり、結果として患者様の今後の人生に大きな影響を与えることもあります。
一方、整体院では利用者様が施術者を指名することが可能で、自分の希望に合った施術内容を選ぶことができます。
「保険診療で安価だが担当者が選べないリハビリ」と「費用はかかるが自分で施術者を選べる整体」という選択肢は、どちらを重視するかが利用者様の価値観に委ねられます。
「かかりつけ」を作ることは簡単ではありませんが、信頼できる施術者を見つけられた場合、心身ともに安心感を得ることができます。
自分の体をしっかりと見てくれる「かかりつけ」を探すことは、健康を維持する上で非常に重要なポイントです。
【⑤治療方針・施術方針】
理学療法士が病院で行うリハビリテーションは、病院の方針や担当医の指示に従って実施されます。
たとえば、肩の疾患でリハビリのオーダーが出ていれば、理学療法士は基本的に肩のリハビリに集中します。
私自身も外来リハビリの現場を見てきましたが、患者様が肩以外にも問題を抱えている場合でも、主治医の意向が優先されることがほとんどです。
そのため、患者様個人の状態に合わせた包括的なリハビリではなく、特定の疾患に焦点を当てたリハビリが提供されがちです。
一方、整体院では全身へのアプローチを基本とし、体全体のバランスを整える施術を行います。
さらに、整体では利用者様の希望を第一に考え、できる限りその要望に寄り添った施術を提供します。
整体師にとって利用者様の満足度は重要であり、希望に応えられなければ利用者様が離れてしまう可能性があるためです。
そのため、治療方針や施術方針において「疾患ファースト」ではなく「利用者様ファースト」の対応を求める患者様であれば、病院でのリハビリよりも整体院での施術をお勧めすることが適切です。
整体院では、利用者様の希望や目標に基づいた柔軟なアプローチが可能であり、より満足度の高いケアを提供できる場合があります。
【⑥施術時間の長短】
病院での外来リハビリテーションの場合、一回の施術時間は20~40分程度と決まっていることが一般的です。
この時間設定は病院の運営上の都合で決まるため、患者様が希望しても延長することは難しいのが現状です。
また、限られた時間内で特定の疾患部位に集中してリハビリを行うため、他の部位を診てもらう余裕がないことが多いです。
これが、疾患部以外を診てもらえない理由の一つでもあります。
一方、整体院では60分コースや90分コースなど、施術時間を利用者様自身で選ぶことができます。
この柔軟性により、疾患部だけでなく全身を丁寧に診てもらう時間を確保することが可能です。
また、「しっかり話を聞いてほしい」「身体全体を整えてほしい」といった利用者様の要望にも応じやすく、時間的な余裕があることでよりきめ細やかな対応ができるのが特徴です。
限られた短時間で効率的なリハビリを提供する病院と、時間をかけて全身にアプローチできる整体院は、それぞれにメリットがあります。
施術時間や内容にこだわりがある利用者様には、整体院の選択肢を提案するのも一つの方法です。
【⑦営業時間の長短】
病院のリハビリテーションは、基本的に平日の9時から17時までと決まっていることが多いです。
この時間帯は、日中に時間の取れる高齢者や主婦の方々にとっては利用しやすい一方で、働いているサラリーマンや学校に通う学生にとっては通院が難しい場合があります。
そのため、平日の日中に時間が取れない方にとって、病院でのリハビリは利用しづらいという現状があります。
一方、整体院の多くは9時から20時、さらには夜遅くまで営業しているところも少なくありません。
サラリーマンや学生など、日中忙しい人々をターゲットにした柔軟な営業時間が特徴です。
このため、仕事帰りや学校帰りなど、利用者様のライフスタイルに合わせた通院が可能です。
この営業時間の違いは、患者様や利用者様にとって非常に重要なポイントとなります。
日中の通院が難しい方には、整体院のような夜遅くまで営業している施設をお勧めすることで、無理なく体のケアを続けられる環境を提供できます。
利用者様の生活スタイルに寄り添った選択肢を提案することが大切です。
【まとめ】
理学療法士と整体師の違いを7つのポイントに分けて解説しました。
患者様からよく受ける質問に答えられるように、実体験を元にまとめた内容です。
特に退院後のケアに関する不安を抱える患者様に対しては、保険適用のリハビリと自費の整体の違いを理解し、最適な選択肢を提案することが大切です。
この情報を参考に、患者様の疑問をしっかり解消し、信頼関係を築く手助けとなれば幸いです。