患者様や利用者様との会話の中で、「理学療法とマッサージは何が違うの?」「整体院と整骨院って同じなの?」「カイロプラクティックはどんな施術をしているの?」といった質問を受けたことはありませんか?
そして、その質問に対して満足のいく回答ができていますか?
もし、これらの質問に自信を持って答えられないのであれば、それは単に知識が不足しているだけでなく、自分の施術が他の業種とどのように異なるのかを十分に理解していないということかもしれません。
つまり、自分が行っている施術の有効性や必要性を患者様に伝えることができていないということです。
この記事では、理学療法士のあなたが他職種との違いを理解し、患者様や利用者様の質問に的確に答えるため、また自分の施術を差別化するために役立つ情報をお伝えします。
【施術を生業とする職業のジャンル分け】
この記事では、「理学療法士」「あんま(マッサージ)」「鍼灸師」「柔道整復師」「整体師」「カイロプラクティック」の6つの職業について、それぞれの「施術内容」「利用可能な保険」「開業権の有無」の観点からジャンル分けしていきます。
この記事を読むことで、患者様や利用者様からの質問に的確に答えることができるようになり、さらに自分の施術と他職種の施術との違いが分かるようになります。
知識や技術面で患者様から信頼されるために、しっかりと理解しておきましょう。
【施術を生業とする職業|施術内容】

施術を生業としている職業、「理学療法士」「あんま(マッサージ)」「鍼灸師」「柔道整復師」「整体師」「カイロプラクティック」の施術内容をまとめました。
患者様や利用者様の質問に答えられるように、各業種の施術内容と対象疾患は把握しておきましょう。
【理学療法士の施術内容】
理学療法士は、運動機能の改善や維持を目指し、運動療法、筋力トレーニング、ストレッチ、関節可動域訓練、姿勢矯正を提供します。
さらに、物理療法(電気刺激、温熱、冷却など)を通じて痛みの緩和や炎症の軽減を図ります。
患者個々の状態に基づいてリハビリ計画を作成し、日常生活動作を支援します。
脳卒中や脊髄損傷などの中枢神経障害、骨折や靭帯損傷などの整形外科的疾患、加齢や疾患による運動機能の低下、スポーツ外傷、生活習慣病による身体機能の低下などが対象です。
【あんま(マッサージ)の施術内容】
あんま師は、手技を使って筋肉をほぐし、血流を促進する施術を行います。
揉捏法や軽擦法で筋肉の緊張を解消し、リンパの流れを改善します。
ストレス解消やリラクゼーション効果を得るために施術を調整し、全身のバランスを整えます。
肩こり、腰痛、神経痛、頭痛、ストレスによる疲労、不眠症などの緩和を目指します。また、慢性的な筋肉の緊張や体調不良を改善し、リラクゼーションを希望する方が対象です。
【鍼灸師の施術内容】
鍼灸師は、鍼(細い金属針)や灸(温熱刺激)を用いて、東洋医学に基づく施術を行います。
ツボに刺激を与えることで、痛みやコリの緩和、血行促進、自律神経の調整を図ります。
自然治癒力を高めることを目的とした安全な施術が特徴です。
肩こり、腰痛、神経痛、頭痛、冷え性、不眠症、婦人科系の不調、消化器疾患、自律神経の乱れによる症状など、幅広い身体の不調が対象です。
【柔道整復師の施術内容】
柔道整復師は、骨折、脱臼、捻挫、打撲などの外傷に対し、手技による整復や固定処置を行います。
テーピングや包帯、ギプスを使用し、患部を安定させる施術を実施します。
手術や薬を用いず、自然治癒力を活かした治療が特徴です。
骨折、脱臼、捻挫、打撲、筋肉や腱の損傷などの急性外傷が主な対象です。また、スポーツによる怪我や日常生活での軽微な外傷にも対応します。
【整体師の施術内容】
整体師は、骨格や筋肉の歪みを整えるための手技を行い、体のバランスを改善します。
マッサージやストレッチを用いて筋肉の緊張を緩和し、姿勢や体のバランスを整えます。
患者の希望に応じてオーダーメイドで施術を行います。
肩こり、腰痛、頭痛、姿勢不良による慢性的な体の不調、疲労感、手足のしびれなど。生活習慣やストレスによる不調にも対応します。
【カイロプラクティックの施術内容】
カイロプラクティックは、手技を用いて背骨や骨盤の歪みを矯正します。
神経伝達の改善を目的とし、脊椎調整を中心に行います。
姿勢改善や運動指導を含め、自然治癒力を高めるアプローチを取ります。
腰痛、肩こり、頭痛、自律神経失調症、関節の痛み、スポーツ障害など。姿勢不良や神経系の不調に起因する症状も対象です。
【施術を生業とする職業|利用可能な保険】

施術を生業とする職業は、保険制度によって「医療保険」「介護保険」「自由診療」の3つに大きく分けられます。
この章では、それぞれの保険制度について「保険内容」「利用者負担額」「保険適用の業種」を解説します。
【医療保険下での施術】
医療保険は、公的な保険制度で、病気や怪我に対する診療費の一部を国や自治体が負担する仕組みです。
日本では健康保険(国民健康保険、社会保険)がこれに該当し、誰もが加入する義務があります。
医療機関での診察や治療のほか、一定の条件下で施術業も対象となります。
通常、保険適用される場合、診療費や施術費の1~3割(年齢や所得による)が自己負担となります。
【介護保険下での施術】
介護保険は、高齢者や要介護状態の方が適切な介護や支援を受けられるようにする公的な保険制度です。
市区町村が運営し、40歳以上の国民が保険料を負担します。要介護認定を受けた方が対象です。
要介護度や所得に応じて、費用の1~3割を自己負担します。
【自由診療下での施術】
自由診療は、公的保険が適用されない施術や治療の総称です。
利用者が施術費用を全額負担し、料金は業種や施術内容によって自由に設定されます。
全額自己負担で、施術内容や施術者の技術によって料金は幅広く、1回数千円から数万円までさまざまです。
【施術を生業とする職業|開業権の有無】

施術を生業とする職業の開業権について解説します。
業種によって開業権の有無が異なり、開業権がない業種では他の業種の肩書を借りて開業している場合もあります。
開業権の有無を理解しておけば、退院後の患者様や友人に治療院を勧める際のポイントを伝えることができます。
また、ご自身が独立開業を目指す際にも役立つ知識となりますので、しっかり学んでおきましょう。
【開業権のある職業とない職業】
開業権とは、特定の資格や許可に基づき、自身の名前で独立して施術所を運営できる権利を指します。
国家資格や法的な認可が必要な職業では、開業権が法的に認められています。
一方で、特定の法律に基づかない職業や資格では、単独での開業が認められない場合があります。
【開業権のない理学療法士へ】

理学療法士として働いていると、「開業すればいいのに!」「退院後もあなたに診てもらいたい」など、うれしい言葉をいただくことがあります。
しかし、理学療法士には開業権が認められていないため、独立して開業することはできません。
そのため、独立を希望する理学療法士の中には、開業が認められている整体師などの業種に肩書きを変えて、独立開業を実現している場合もあります。
あなた自身がキャリアを積み重ねる中で、こうした選択肢の一つとして考えていただければ幸いです。
理学療法士が副業で整体院を開業するまでのロードマップを紹介についての記事は、こちらからどうぞ
【まとめ】
この記事では、理学療法士をはじめとする施術業種「理学療法士」「あんま(マッサージ)」「鍼灸師」「柔道整復師」「整体師」「カイロプラクティック」の違いについて解説しています。
各職業の施術内容、利用可能な保険、開業権について触れ、患者様や利用者様からの質問に自信を持って答えられるようになります。
特に、理学療法士には開業権がないため、独立を希望する場合は他業種の資格に変更する選択肢もあることを説明しています。
この記事を通じて、他職種との差別化と専門性の理解を深め、より信頼される施術者を目指しましょう。